ニックマジューリ

  • 「富の階段」をミニマリズムの方法論を用いて脱構築してみる

    ニック・マジューリ『THE WEALTH LADDER 富の階段』を読んだ。

    資産にはレベルがあり、レベル(階段)ごとに行うことが異なるという内容で、その戦略が書かれている。

    偶然か、二週間前に「フェーズとビジネスモデル」というテーマのJournalを書いた。ここで対象としたのは、フォロワーと収益だったが、タイトルの”フェーズ”はすなわちレベルとほぼ同意義である。ニック・マジューリは収益ではなく富に主眼を置く。今回は、本に書かれている内容に、ミニマリズムの方法論を加えて考えてみたい。

    お金の話が難しくなるのは、ほとんどの議論が万人に同じ正解を探しにいくからだと思う。だが現実は違う。資産ゼロに近い人と、すでに億を持つ人では、同じ行動がまったく違う結果を生む。筋トレで言えば、退院直後の人に高重量スクワットはお勧めしないし、トップアスリートに散歩だけを勧めても伸びない。「フェーズとビジネスモデル」では、プラットフォームの成長度合いによって戦略が異なることを解説した。資産形成も同じで、今いる地点によって攻略法は全く変わってくる。

    ここでは、資産を6つのレベルに分けて考えている。ここでの資産は、現金・株式・その他(不動産はローン・負債を除く)とする。目安は以下のとおり。

    レベル1:0〜150万円
    レベル2:150万円〜1500万円
    レベル3:1500万円〜1億5000万円
    レベル4:1億5000万円〜15億円
    レベル5:15億円〜150億円
    レベル6:150億円以上

    重要なのは、レベルが上がるほど努力の方向と方法論が変わっていくことだ。序盤は生存と立て直しに重きが置かれ、中盤は稼ぐ力が大事になり、後半は資本と仕組みの世界になる。これが富の階段の骨格になっている。

    レベル1(0〜150万円)は、とにかく守りが最優先になる。この層は全レベルの中で2番目に多いとされる。投資以前に、出血を止めなければならない。悪い借金(高金利のローン、リボ払い、見栄の消費など)があるなら、まずそこを断つ。過去に「借金を返済する方法」という動画を作っているが、僕もまさに20代の頃はこのレベルにいて、もがいていた。最初にやったことは、リボ払いの借金の返済だった。

    ここで必要なのは派手な知識ではなく、生活を壊す要因の排除だ。そして学習はなるべく無料で利用できるものを使う。図書館、ネット、現場の仕事から吸収できるものは多い。ここはミニマリズムの本領とも言える領域で、固定費と誘惑を徹底的に削って次の一手を打つための余白をつくる段階だ。

    レベル2(150万〜1500万円)に入ると、少し景色が変わる。ここは最も人口が多いレベルでもある。貯金ができ、精神的にも少し余裕が出てくる。だがここでの主戦場は積み立てNISAでも不動産でもなく、自分への投資だ。実はまだ株式投資をしっかり行うレベルではないのである。それよりも自己投資で収益を伸ばすほうが収益率は高くなる。

    節約はもちろん効くが、レベル2が本当に超えるべき壁は収入の天井になる。市場価値が上がるスキル、伸びる領域への移動、学習と制作の習慣化。ここに資本(時間と少しのお金)を集中させた方が、将来の余剰とリターンは大きくなる。ソロプレナーならなおさらで、発信、編集、執筆、セールス、プロダクト設計は資産を生む技能になる。投資はNISA口座を使って行うのに越したことはないが、自動かつ小さい積み上げでいい。あくまで優先順位は、指数の利回りより、自分の伸びしろということになる。

    レベル3(1500万〜1.5億円)は、労働だけでは届きにくい領域に入る。ここからようやく「自分が稼ぐ」ではなく、「お金が稼ぐ」を本格的に起動する。投資比率を上げ、できるだけ早い時期に厚く入金する。時間を味方につける。同時に、収入源は時給労働を手放していく。ここでは月給をもらっている会社員も、自分の時間を売って報酬を得ているという意味で時給労働となる。

    僕が提唱してきた「エクストリームミニマリズムでFIREをデザインする」の核はこのレベルにある。極端に持たないことで生活の下限を固定し、浮いた時間と収益を、学習とコンテンツ、そしてプロダクトに再投資する。ひとつの会社に人生を預けず、発信・販売・コミュニティ・コンサル・版権など複数の収益の柱をつくる。レベル3は、資本と創造性のダブルエンジンで登る階段だと言える。

    レベル4(1.5億〜15億)は「仕組み」がテーマになる。自分が動かなくても、自動で回る仕組みを作り、その比率を増やしていく。外注、SOP化、サポートの分離、商品導線の自動化。ここで大事なのは、売上よりも再現性だ。自分が倒れたら止まる構造のままでは、規模を上げるほど脆くなる。実はYouTubeは、出演を自分に依存しているという点では、倒れると止まる構造のものである。

    逆に言えば、ここまで来たらどこまで登るかは価値観の問題でもある。このレベルに到達した時の問題は、プレイヤーから管理へと移行して、仕事が面白くなくなってしまうことである。ここで言うプレイヤー/管理は、会社員の文脈で使われる営業職/管理職という意味合いとは若干異なる。なぜなら、すでに仕組み化・自動化が完成している段階のため、プレイヤーであってもほぼ現場に出ない場合もあり、管理であるとなおさら現場に行くことはない状態になるからである。

    現場や、自分の手を動かして行うことが好きなら、あえてこのレベルで満足してもいい。次のレベルを目指さないほうが、人によっては幸せになれるということである。

    レベル5〜6(15億〜150億〜)は、世界が別物になる。ここでの拡大のコアは事業売却やM&Aであり、それに法務や防衛、ガバナンスが付随する。これは一般論として知っておけば十分で、ほとんどの個人にとって重要なのは、レベル2〜3をどう突破するかだと思う。

    以上がレベルごとの状態と戦略の話し。

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