富裕層

  • 『Die With Zero』をミニマリズムと仏教で読み直す

    今週はビル・パーキンスの『Die With Zero』(2020)を再読した。

    売れた本なので、読んだことがある人も多いと思う。これがちょうどコロナ禍の時に発売されているのも興味深い。あのパンデミックの非常時には、誰もが残された人生をいかに生きるか、ということを意識せずにはいられなかった。移動が制限され、金が使えなくなると、資産を持っている老人たちは、確かに、ああこのまま移動できないまま逝ってしまうのだろうか。せっかく長い間、働いて働いて資産を築いてきたのに、それを使えないまま、この世を去ることになるのか。だったら、がんばって働かなければよかった。そう思った人もいるかもしれない。

    この本を読んで、「これは富裕層のたわごとだ」と一蹴するのは簡単だ。実際に僕もそう思う。

    著者のビル・パーキンスは米国のバージン諸島を拠点に事業を展開するCEOであり、ヘッジファンドマネージャーやポーカープレイヤーなどを兼任し、資産は1億2000万ドル(約200億円)を超えている。

    「思い出作り」のために、カリブ海にある島のホテルを貸切り、親族や友人を招いた自身の誕生日パーティーを盛大に1週間にわたり開催したくだりは、単純に良いなぁと思うが、楽しさよりも、儚さを感じる。ウェルベックの小説を読んでいるような気持ちになった。

    しかし、本の中で書かれていることは、的を射ている。まとめるとこんな感じだ。

    • 残るのは思い出だけ。思い出作りと経験に投資しよう。
    • 45歳から60歳くらいには資産を切り崩しはじめよう。
    • 死んでから遺産を子供に相続させるのではなく、生きてる間に、適切な時期にお金を与えよう。
    • 若いうちにリスクをとろう。
    • 今使うお金と、残すお金のバランスをとろう。

    僕もこれらのアドバイスには、同意するところが多い。タイトルや表面だけを読むと、死ぬまでに全ての金を使いきれ、と言っているように見えるが、実際は、現在と未来で使うお金のバランスをとろうね、というものだ。

    問題は、多くの人が、将来のために「貯める」ことに比重を置きすぎていて、現在をまるで稼ぐための奴隷のように過ごしているのではないかということ。確かに、稼ぐためには、働かなければならない。1日8時間を会社で働いて、週に2日しか休めない生活の中で、現在を犠牲にして老後のために貯め込む。その老後が、本当に来るかどうかもわからないのに。

    ここで、ひとつ根本的な問いを立ててみたい。

    『Die With Zero』は、いったい誰のための本なのか。

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