心が「満たされる」という感覚は、収入額よりも欲望の総量と注意の向け先で決まります。古代から現代に共通する思想や哲学はみな、欲を見極めて軽くする、注意を整えて今ここを味わう、自分の価値とつながりを生きる、という3本の柱に特徴があります。今回はその3つを簡潔にまとめながら、生活と創作という文脈で、現代における実践可能性を考察します。
1. 欲を軽くする
エピクロス:前300年、サモス島。
欲を3種類に分けた
- 自然かつ必要な欲(水・睡眠・友情・素朴な食事)
- 自然だが不要な欲(豪華さ・過剰な快楽)
- 自然でない欲(地位・名声・他人評価)
1は満たしてよい。2は節度をもってほどほどにする。3は不要な欲望であり、手放すと心は軽くなる。
ストア派:前300年ごろのアテナイ。ゼノン、ポセイドニオス、ローマ期にはセネカ、エピクテトス、マルクスアウレリウスなど。
ストア派は「自分でコントロール可能か?」で線引きをした。名声・他人の反応は自分ではコントロールできない不可領域であり、天気や災害も同じである。一方、知恵・節制・勇気・正義といったことは自らコントロールできるもの。これらに集中することを説いた。