5月29日

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5月29日

新宿三丁目の老舗居酒屋「どん底」へと、まるで人生のどん底にいるかのような表情を浮かべた二人の男が足を踏み入れた。この居酒屋は1951年創業で、地下からなる三階建て。スタッフによれば、客の雰囲気によって案内される階が異なるという。広々とした空間にもかかわらず、いつも混雑しており、この日も例外ではなかった。僕たちは地下に通された。どうやら僕らの顔は「地下顔」らしい。

二人の男は、それほど若くもなく、年老いてもいない。片方は大手企業に勤め、ニューヨーク出張から戻ったばかり。もう片方は、ヨガを除くすべてを捨て、わずか60個の持ち物で暮らすミニマリスト、つまり僕、トキマルタナカだ。レンガ造りのビルの地下、まさに人生のどん底のような場所に身を置いていると感じたが、その空間には過去の時間が静かに滞留しており、不思議と居心地が良かった。

ハイボールを飲んだ記憶があるが、詳細は覚えていない。気づけばゴールデン街の小さなバーにいた。カウンターには6席ほどしかなく、僕らを含めて4人の客がいた。途中でドイツ人らしき観光客が入ってきて、全員にショットを振る舞った。彼はしばらく何かをぶつぶつ言っていたが、英語で少し話した内容は覚えていない。しばらくすると、また別の観光客が入ってきて、また全員にショットを振る舞った。どうやらガイドブックには「新宿ゴールデン街では小さなバーをホッピングしてローカルとの交流を深めるのはいかが?その際はテキーラのショットを全員に振る舞うことをお忘れなく」とでも書かれているのかもしれない。何しろ円安で、彼らにとってはホテルの朝食よりも安上がりなのだ。

数日が経ち、今日。

まだカレーの匂いはしないが、その予感は十分にある。恐れるようで、同時に期待している自分がいる。そしてまた昼にはカレーを食べに行くだろう。昨夜は少し遅くまで起きていたので、朝の練習も遅くなった。それでもアシュタンガヨガのフルプライマリーをマイソールスタイルで行った。

フルプライマリーを行うのは久しぶりだ。おそらく4、5日ぶりだろう。その間に何度か酒を飲みに行ったせいでリズムが崩れた。フルプライマリーを行うことは、乱れたリズムを取り戻すことだ。演奏している曲からずれたメトロノームを一度止め、再びスタートさせるように。現代の生活の中でヨーガを行うのは容易ではない。夜10時前には確実にベッドに入らなければならず、夕方以降の酒や会食はもってのほかだ。そういう生活を送っていると、自分が少しずつではあるが確実に良くなっているのを実感する。たとえそれが錯覚だとしても。

このような生活をしていると、周りからは「ハマりすぎて怖い」とか「社会生活送るのがキツくなるね」とか言われる。実際に言われたこともある。社会から少しずつ離れている感覚はある。しかし、何を言われても実践に先立つものはない。そこには怒りも反論もなく、ただ静かな確信があるだけだ。

みんな結婚して子供を持ち、疎遠になった。僕は一人で老いていく。しかし、酒だけが唯一の友になるようなことは避けなければならない。結婚していようがいまいが、男は歳をとるにつれて友達が減り、酒だけが友人のようになっていくのだから。

変わることと、変わらないことがある。変わることを実感するためには、変わらない物差しが必要だ。人は誰でもそのような物差しを一つくらい持っているものだ。毎日飲む同じコーヒーでも、毎日歩く同じ散歩コースでも、毎日行う同じヨーガの練習でも。その変わらない行いが、自分を変化の気づきへと向かわせる。日々の反復の中で、そのことを考えている。

プロテインをまた飲み始めた。チョコ味のREYSホエイプロテインを水200mlに溶かしてシェイクする。シェイクしながらフルスクワットを10回。シリアルをマグカップに目一杯入れて、ヨーグルトを少し乗せ、豆乳で満たす。シリアルを食べ終わったら、そのマグにネスカフェを入れてコーヒーを作る。シリアルを食べた後の豆乳がネスカフェの黒と混ざって、漆黒の宇宙に浮かぶ銀河ようにマグカップの中で揺れる。ラップトップの置かれたデスクに持っていき、ナッツとチョコレートを用意する。Ulyssesを立ち上げて書き始める。外は夏休みのように晴れていて、風が吹いている。揺れるカーテンがタイピングしている左肘を撫でる。

ようやくカレーの匂いがしてくる。予定通り。今日もカレーを食べに行くだろう。