目次
- ネーミングの重要性
- 理想の未来を設定する
- 模倣する
- ブランドコンテンツを作る
- 自分のストーリーを書く
- 問題が出たら引き算で
1. ネーミングの重要性
ブランド(会社)を立ち上げる時、名前は重要だ。名前は、最初のプロダクトであり、最初のUXだと言える。人はあなたの活動を、まず言葉として受け取る。だから、親しみやすく、書きやすく、覚えやすく、口に出しやすい名前ほど、出会いの摩擦が小さくなる。発音しやすい名前ほど好意や記憶に繋がりやすい。
有名企業を思い浮かべると、摩擦の少なさが徹底されていることが分かる。Apple、Amazon。短く、口に出して気持ちいい。日本でも、メルカリ、ユニクロ、吉野家。どれも人が覚えるための負担を極限まで減らしたような名前だ。ここで大事なのは、センスよりも設計である。覚えやすさは美学であり、同時に戦略なのである。
名前は人間の記憶のためだけでなく、検索と一覧のための名称でもある。かつては電話帳や企業ディレクトリが強かった時代があり、アルファベットの早い位置にある名前が有利になる場面が確かにあった。実際、スティーブ・ジョブズは「Atar(米国のゲーム・家電企業)より電話帳で先に出る」という理由もAppleという名前の一因だった、と振り返っている。Amazonも創業当時、サイトの一覧がアルファベット順で並ぶことを意識し、Aで始まる単語を辞書で探したという話が残っている。もちろん現代は、電話帳が主戦場ではないが、一覧に並ぶ、検索される、読み間違えられる、という現象自体は形を変えて今も残っている。App Store、SNS、検索結果、音声入力、友人への口頭紹介。どこでも、名前は並び、聞かれ、打たれるものである。
ここで話は、ドメインに繋がる。ネット時代のビジネスは、極端に言えばドメインファーストだ。ドメインの重要さを理解していない経営者は意外に多い。会社の名前をつけたあとで、その名前が既にあったり、他のサービスが使用しているというパターンは最悪だ。
サイトのURLだけでなく、独自ドメインのメールまで含めて、名前は信用の器になる。実際、独自ドメインのサイトやメールは信頼・信用の判断に影響するという調査が複数ある。
名刺を配る前に、リンクを渡す前に、人は一瞬であなたを判断する。その一瞬で目に入るのが、ドメインとメールアドレスだ。ここが整っていると、たとえ小さな個人事業でもきちんとしているという印象が立つ。逆にここが崩れると、中身が良くても入口で損をする。
だから、ブランドネームや会社名を考えるときは以下を考慮する
- その名前は、子どもでも一発で書けるか(スペルミス耐性)
- 初見で読めるか、口に出して気持ちいいか(発音の自然さ)
- 一回聞いて覚えられるか(短さ・リズム)
- そして何より、その名前で .com(あるいは主要TLD)が取れるか、主要SNSのハンドルが取れるか
固有名詞の強さは、ここで効いてくる。唯一無二の単語は、ドメインも取りやすく、検索でもあなたに収束しやすい。逆に、半端に一般語に寄せた名前は、競合が増え、検索の文脈が散り、ブランドの輪郭がぼやける。昔はキーワードをそのままドメインに入れて上位を取るという発想が流行したが、Googleは低品質な完全一致ドメイン(EMD)を順位面で抑えるアップデートを行ってきた。つまり、ドメインや名前だけでショートカットしようとすると、長期ではむしろリスクになりうる。
最後にもう一つ。名前は、あなたのビジョンを表すためにも重要だ。ブランド名は、看板であると同時に、羅針盤でもある。「この名前の人なら、こういう未来に向かっているはずだ」と、他者の期待を生むような名前は強い。期待が生まれると、物語が始まる。物語が始まると、コンテンツが積み上がる。積み上がったコンテンツは、やがて名前そのものを意味に変える。
名前は最初の投資で、最初の約束である。軽く決めない。だが、こねくり回しすぎてもいけない。最小の言葉で、最大の未来を背負える名前を選ぶ。ここから、ブランドは始まる。
2. 理想の未来を設定する
個人ブランドは今の自分を飾り立てる作業ではない。むしろ逆で、未来の自分に向けて、いま何を捨て、何を積むかを決める設計だ。ブランドとは、世界に対する一種の約束であり、約束である以上、時間軸を持つ。だから最初に必要なのは、ロゴでも肩書きでもなく、どんな未来へ向かうのかという一点になる。
たとえば今、ただ服やモノを作るだけでは勝ちにくい。安くて良いものは、ユニクロや無印良品のような巨大な仕組みが、すでに高い水準で供給している。価格・品質・流通という土俵で戦うと、個人や小さなブランドは消耗する可能性のほうが高い。これは冷たい現実だが、同時に救いでもある。埋もれないためには土俵を変えればいいからだ。価格ではなく、意味。機能ではなく、文脈を重視する。
そこでストーリーが立ち現れてくる。